「在る宵」誕生――一瓶に込められた、ふるさとと日本酒の未来

「故郷の再興と日本が誇る伝統産業である酒の再興を」

そんな想いが、静かに、しかし確かに形になろうとしています。

舞台は、福岡県の小さな町「福智町」。
この町で、ある醸造所が新たな一歩を踏み出しました。

その名は「天郷醸造所」。
代表取締役の中山雄介さんが手がける、酒造りという伝統産業への挑戦です。

「なぜ今、酒造りなのか？」
「なぜ地方の小さな町で？」

そう思う人もいるかもしれません。
でも、その答えは、彼らが生み出した一本の酒――「在る宵（あるよい）」にすべて込められています。

「在る宵」に込めた想い――酒がつなぐ過去と未来

「在る宵」というブランドには、深い意味が込められています。

「在る」ものを見つめ直す、「酒」と「宵」の時間。
何気ない日常の一夜が、この酒とともに、かけがえのない時間に変わるように。

そして、「在る」という存在への肯定。
過去にどんなことがあっても、今ここに”在る”ことを祝福しようという前向きなメッセージです。

酒は、ただの嗜好品ではありません。
それは、誰かと心を交わすきっかけであり、人生の節目を彩るものでもある。
そして、ときに人の想いや記憶をも乗せて、未来へと運ぶ「文化」そのものなのです。

2023 年12月に設立された「天郷醸造所」は、まだ新しい酒蔵です。

しかし、使っているのは日本が誇る伝統的な製法と、地元・福智町の豊かな水と米。
福岡県産の山田錦と、地元の農家が育てた合鴨農法による完全無農薬のヒノヒカリを使用し、流行にとらわれない”本当に愛せる味”を追求しています。

特筆すべきは、福智山山麓の伏流水。
酒蔵建設の際のボーリングで偶然湧き出した、カルシウムが豊富な中硬水は、世界的にも貴重な天然井戸水です。

地域に根ざしながら、現代的な感性も忘れない――そんな絶妙なバランスで造られる「在る宵」は、どこか懐かしく、でも新しい。

この新しい日本酒「在る宵」は、2025 年10月1日「日本酒の日」から予約受付が開始されました。

代表の中山さんにとって、この日は誕生日でもあるといいます。
「奇しくも『日本酒の日』であり、私自身の誕生日でもある10月1日となったことに、深い縁と導きを感じています」

日本酒の日に生まれる酒――これもまた象徴的です。
福智町から、新たな酒文化が芽吹こうとしています。

この一瓶に込められているのは、地元への愛情だけではありません。
それは、地方と伝統に、もう一度光を当てようとする”再生”の物語。

「在る宵」は、ただの新商品ではありません。

それは、ふるさとと伝統産業の再興に人生をかけた人々の挑戦であり、
日本酒という文化の未来を支えようとする、静かだけれど強い意志の表れです。

私たちがこの酒を手に取ることで、
小さな町にまたひとつ灯りがともるかもしれない。
そして、誰かの何気ない夜が、忘れられない宵に変わるかもしれない。

一杯の酒に、未来を注ごう。
「在る宵」とともに――。