たとえば、旅先で見つけた小さな居酒屋。
ふらっと入って頼んだ一杯が、想像を超えて心に染みた—そんな体験、ありませんか？
名も知らぬ場所で、心に残る味に出会ったとき、人はその瞬間を一生忘れません。
今日お話しするのは、まさにそんな”心を打つ一杯”のお話です。
長野県・信州にある小さな酒蔵、小野酒造店が造る「夜明け前 純米大吟醸」が、世界で2つの頂点を極めました。
香港で開催されたアジア最大級の日本酒コンペティション「Oriental Sake Awards 2025」で、リッチ＆アロマティック部門のチャンピオンに。
そして、それに先立つこと1カ月、イタリア・ミラノで開催された「ミラノ酒チャレンジ 2025」にて「夜明け前 大吟醸」が最高賞を受賞。
小さな町の酒蔵が、今や世界の注目を集めています。
夜明け前──静けさに宿る力
「夜明け前」と聞いて、どんな情景を思い浮かべますか？
まだ街が眠っている頃、東の空がほのかに染まりはじめるその瞬間。
張りつめた静寂と、新しい一日が始まる予感。
それはまるで、このお酒の味わいそのものです。
この酒を生み出すのは、長野県上伊那郡辰野町にある小野酒造店。
1864 年創業、160 年の歴史を持つ老舗ながら、量産やトレンドには流されず、信州の自然と対話するように酒を造り続けてきました。
「夜明け前 純米大吟醸」は、香り豊かで、口当たりはまるで絹のようになめらか。
飲んだ瞬間に広がるのは、甘いフジリンゴのような華やかな香りと、程よい甘み。
後味は澄んだ水のようにすっと消え、まるで早朝の森で深呼吸したかのような余韻が残ります。
世界が認めた”リッチ＆アロマティック”
「Oriental Sake Awards 2025」は、国内外から集まった日本酒が厳正に審査されるアジア最大級のコンテスト。
その中でも「リッチ＆アロマティック部門」は、特に香りと味の深みが重視される、いわば”香りの芸術部門”。
ここで「夜明け前 純米大吟醸」は、156 の酒蔵・531 銘柄の中から堂々のチャンピオンに選ばれました。
また、1カ月前にイタリア・ミラノで開催された「ミラノ酒チャレンジ2025」でも「夜明け前 大吟醸」が最高賞「マニフィカ賞」を受賞。
このコンテストは、イタリア人のソムリエやワインの専門家が審査するため、文化や味覚の壁を超えて本物が評価される場です。
つまり「夜明け前」は、日本の心だけでなく、世界の舌と感性にも響いたのです。
なぜ、この酒が世界に届いたのか？
その理由は、きっとシンプルです。
最新技術でも、豪華なパッケージでもない。
このお酒は”人の手”が造っています。
杜氏（とうじ）と呼ばれる職人たちは、毎朝米を洗い、蒸し、麹を育て、温度と湿度に耳を澄ませながら、ひとつひとつ丁寧に工程を積み重ねています。
大量生産ではけっして生まれない”手間と時間の結晶”。
そしてこの酒には「言葉を超える力」があります。
国も文化も違う審査員たちが、この1杯に心を動かされたのは、理屈ではありません。
香り、口当たり、余韻—五感に語りかけるものに、言葉はいらないのです。
最後に：一杯の酒が、心をほどく
日々、慌ただしく過ぎていく毎日の中で、自分をいたわる時間を持つことはとても大切です。
「夜明け前 純米大吟醸」は、そんな”人生の余白”にそっと寄り添ってくれるお酒。
たとえば、一人の夜にグラスを傾けながら、静かに今日を振り返る時間。
あるいは、大切な誰かと語り合う晩餐のひととき。
その透明感と芳醇さは、きっとあなたの心にも、小さな朝日を灯してくれるはずです。
一滴の酒に、込められた職人の誇りと物語。
その味わいに、ぜひ触れてみてください。
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