2025年3月17日の日本経済新聞は、日本酒業界の深刻な構造問題を報じました。
国内向け製造の新規免許が約70年間も発行されていないという現実。
世界中で SAKE ブームが広がる一方で、国内では新しい醸造所の誕生が法的に阻まれています。
この記事を読みながら、私は日本の伝統産業が抱える「保護と革新」のジレンマについて考えさせられました。
70年続く「新規参入ゼロ」の現実とその影響
「国内向け製造の新規免許を認めないルールがおよそ70年続く」という事実は、日本酒業界の現状を象徴しています。
この規制は既存酒蔵を保護する目的で続けられてきましたが、皮肉にも市場はピーク時の5分の1まで縮小してしまいました。
私が特に気になったのは、若手醸造家の参入障壁の高さです。
記事によれば、酒造りを志す若者は「免許を持つ事業者を負債ごと買収する」という例外的な方法でしか業界に入れないようです。
これでは新しいアイデアやエネルギーが入ってこないのも当然でしょう。
例えば岩手県のある若手醸造家は「負債付きの酒蔵を買収するために 8,000万円もの資金を用意しなければならなかった」というケースも紹介されていました。
まさに高すぎる参入障壁です。
世界と国内の乖離：SAKE ブームという逆説
国内市場が縮小する一方で、海外では日本酒人気が高まっています。
日本酒の輸出額は 2023年に一時的な落ち込みがあったものの、長期的には右肩上がりで、特に高級酒の需要が伸びています。
輸出向けに限っては新規免許の解禁も検討されているようですが、これはさらに国内と海外の分断を深める懸念もあります。
海外で「SAKE」として評価されるものと、国内の伝統的な「日本酒」の間で、どのようなバランスを取るべきなのでしょうか。
私はこれを見て「護送船団方式」の限界を感じずにはいられません。
同じ業界を保護するはずの規制が、むしろその衰退を加速させている皮肉な状況です。
イノベーションと伝統の共存は可能か
記事には具体的な解決策は示されていませんが、わたしなりに考えてみました。
もし新規免許を段階的に解禁したら？
あるいは「クラフトビール」のように、小規模生産者向けの新しいカテゴリーを設けたら？
日本酒業界に革新をもたらした成功例として「獺祭」も記事で言及されていました。
彼らは伝統的な杜氏制度に頼らず、科学的アプローチと機械化によって高品質の酒を安定生産する道を切り開きました。
また、ニューヨークに酒蔵を建設し、現地生産を始めるなど、グローバル展開にも積極的です。
未来への提言：「復興」から「創造」へ
日本の伝統文化の保存は大切ですが、あまりに硬直的な保護は、結果として守るべきものを衰退させてしまいます。
私たちはもっと「保存」と「創造」のバランスについて考えるべきではないでしょうか。
日本酒業界が世界の SAKE ブームに乗り遅れず、むしろそれをリードしていくためには、新しい血を入れることも必要です。
70年間続いた「新規免許ゼロ」という状況を見直す時期に来ているのかもしれません。
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