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一杯の酒が、世界をめぐる—「環(めぐる)」が照らす未来のかたち

夕暮れの田んぼを歩いたことはありますか?
あの、少し土の匂いが混じった風。遠くで鳴くカエルの声。
そして、稲穂が風にゆれる音—そのすべてが静かに、でも力強く「自然と共に生きる」ことを教えてくれます。

そんな風景から生まれた日本酒があります。
その名は「環(めぐる)」。
ただの地酒ではありません。
自然と人、地域と未来をつなぐ、小さな奇跡のようなお酒です。

この「環(めぐる)」プロジェクトが、2025 年の第6回「SDGs ジャパンスカラシップ岩佐賞」を受賞しました。

でも……なぜ「日本酒」が、SDGs のトップに選ばれたのでしょうか?

🍃自然に学び、地域とともに醸す—環(めぐる)プロジェクトとは

「環(めぐる)」は、兵庫県を中心に展開されている取り組みです。
「呑むと地域の資源が回りだす。地球環境への負担を減らす。もちろん、おいしい」というフレーズを掲げるこの日本酒プロジェクトは、温暖化などの気候変動を乗り越え、これからもおいしい日本酒を次代につなぎたいという思いを共有する2つの酪農家と5つの農家、7つの酒蔵、神戸新聞社の連携から生まれました。

環プロジェクトの起点は、食と農のごみとなっている有機物を原料とする自然エネルギー「バイオガス」事業です。
兵庫県の弓削牧場(神戸市北区)と箸荷牧場(多可町)という2つの酪農家が生産する「バイオガス」は牧場内の給湯や発電の燃料として活用されています。
発酵によって同時に得られる副産物の「消化液」は、輸入の化石燃料から生産する化学肥料に代わる有機肥料や有用微生物資材として、酒米の栽培に活用されています。

この取り組みでは、微生物の力を活用して土が柔らかくなることや農薬も大幅に削減する脱炭素の農法によって、稲作に使うエネルギーをほぼ半減した農家もあります。
豊倉町営農組合(加西市)、株式会社 ten(加西市)、「中大沢集落改善組合」(神戸市北区)、玄米家(加東市)、ツクダ酒店(西脇市)という5つの酒米農家が生産した兵庫特産の山田錦は、7つの蔵元で純米吟醸酒に醸され、播州一献、白鷺の城、富久錦、盛典、福寿、櫻正宗、大関の7銘柄の「環」(720 ミリリットル、税込み 2,200円)として販売されています。

このプロジェクトは、まるで「未来を仕込むレシピ」。
それは単なる物質的な資源の循環にとどまらず、人々の想いや願いもまた循環させるという深遠な哲学が詰まっています。

🌱なぜ評価された?—SDGs 的観点から見た価値

このプロジェクトが岩佐賞に選ばれた理由は、SDGs の原点を私たちに思い出させてくれるような誠実さと、同時に未来を見据えた革新性を兼ね備えていたからです。

まず特筆すべきは、地域資源を最大限に活かす「生きた循環モデル」としての側面です。
地エネと環境の地域デザイン協議会(事務局・株式会社神戸新聞社メディアビジネス局)が取り組むこのプロジェクトでは、日本酒や牡蠣、竹林などをテーマに、眠れる地域の資源を循環させるものづくりを行っています。
限りある資源を大切に回し続けるという知恵。
農業、酒造、畜産、さらには地域の飲食文化まで、一見別々に見えるこれらの要素が有機的につながることで、地域全体がひとつの「命のシステム」として力強く動き出しています。

次に重要なのは、若者と未来をつなぐ教育的な土壌が築かれていることです。
このプロジェクトが持続可能な社会の礎となり、若い世代がこうした経験を通じて地域への愛着や誇りを育み、未来の担い手として成長していく姿が評価されています。

さらに特筆すべきは、日本酒という伝統文化に新たな役割を見出した点です。
日本酒は単なる嗜好品ではなく、長い歴史の中で育まれてきた日本の文化や価値観を内包した「物語」です。
そこに SDGs の要素を巧みに掛け合わせることで「環(めぐる)」は世界に向けて「日本らしい未来の形」を力強く、かつ繊細に発信しているのです。

🔥「地酒」は、最前線の社会アクションかもしれない

日本酒を飲む—それはただの「晩酌」だと思っていませんか?

しかし、「環(めぐる)」というプロジェクトを知ると、その何気ない行為がまるで未来への投票のように感じられてくるから不思議です。
一杯の酒を選ぶという小さな決断が、実は大きな意味を持ち始めるのです。

この「環」を選ぶということは、単に味わいを楽しむだけではなく、誰かの真摯な挑戦に静かに共鳴し、自然の巡りゆく循環にそっと自分を重ねること。
私たちの日常の選択が、少しずつ社会を変える力になりうるという希望を、この酒は私たちに教えてくれています。

「自分一人の行動では、何も変えられない」と諦めてしまう日もあるかもしれません。
しかし、あなたが今宵手にしたその一杯が、実は誰かの希望になり、明日への一歩を支えているとしたら—。
そう考えると、晩酌の時間がより豊かな意味を持ち始めるのではないでしょうか。

🌈一杯で世界を少し、よくする

「環(めぐる)」という日本酒は、兵庫の風土から生まれた地域の声であり、四季折々の自然のリズムが結晶化したものであり、そして何より私たち一人ひとりの選択と行動が未来を創るという信念の象徴でもあります。

この度の受賞を記念して、2025 年5月8日(木)16時30分から20時まで、神戸市産業振興センター10階(神戸市中央区)でセミナーと交流会が開催されます。
第1部のセミナーでは、資源循環と脱炭素農法をテーマにしたシンポジウムが開かれ「環」の山田錦を栽培する生産者や環プロジェクトリーダーが登壇します。
第2部の交流会では、7銘柄の「環」を醸す7つの酒蔵の当主らの語りを聞きながら、兵庫の食材と「地エネの酒 環」のマリアージュを楽しむことができます。

SDGs という言葉を聞くと、多くの人は少し遠くて難しい概念のように感じるかもしれません。
しかし、この「環」が私たちに静かに語りかけてくれるのは「大きな未来は、小さな循環から始まる」という深遠にして明快な真理です。
持続可能な社会は、遠い誰かが作るものではなく、私たち一人ひとりの日常の選択から生まれてくるものなのです。

今日の晩酌は、もはやただのくつろぎの時間ではないかもしれません。
あなたの手の中の一杯が、目に見えない糸で地域とつながり、そして世界を少しずつ”めぐらせて”いく。
そんな豊かな想像力と希望を胸に、今宵はグラスを傾けてみませんか?
一杯の酒に込められた「環」の精神が、あなたの中で新たな物語として息づき始めるかもしれません。

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