ハンドルを握る手は、次の時代を切り拓く
ある冬の日、雪の残る山道を一台の車が滑るように駆け抜けていく。
タイヤはギリギリのラインで地面を捉え、白煙を上げながらカーブを描く。
ハンドルを握っていたのは、ドリフト界で世界が注目する女性ドライバー、下田紗弥加さん。
一方、その数十キロ先の酒蔵では、職人たちが一滴一滴の温度と香りに集中していた。
静寂の中で発酵する酒は、140年以上の伝統と、手の記憶に支えられている。
スピードと静寂、轟音と静謐、現代と伝統。
正反対とも思えるふたつの世界が、いま交差しようとしています。
2026年、富山の老舗「吉乃友酒造」と、世界を舞台に戦う下田紗弥加さんがタッグを組み、新たな挑戦を始めます。
“走り”に生きる、ひとりの女性の物語
下田紗弥加さんは、男性が多いモータースポーツの中で、自らの居場所を切り拓いてきました。
2019年には国際ドリフトレディース大会(IDLC@北京)で優勝、2023年にはD1GPで女性ドライバー最高位の7位を獲得した実力者です。
彼女の走りはただ速いだけではありません。
まるで書道家が筆先で文字を描くように、微細な操作で車を操り、ドリフトの”線”を描いていきます。
彼女がステアリングを握ると、コーナーがキャンバスに変わる。
タイヤが焼ける音すら、ひとつの”演奏”に感じられるほどです。
YouTube・SNS総フォロワー数40万超という強いメディア発信力と明るい人柄で、日本国内のみならず海外でも高い人気を誇る、ドリフト界の「アイコン」です。
吉乃友酒造、140年以上守ってきた「手仕事」のプライド
その下田さんの想いに共鳴したのが、富山県で140年以上にわたって酒造りを続けてきた吉乃友酒造です。
この蔵では、いまも「手で仕込む」ことを信条とし、職人たちが日々、米と向き合っています。
効率やスピードを求める時代にあって「時間をかけることの尊さ」を知る人たち。
彼らの目指すのは、ただの”おいしい酒”ではありません。
飲む人の心に残る”物語のある酒”を届けること。
そこに共通していたのは「技術を超えた表現」という価値観でした。
車を滑らせる手も、酒を醸す手も、どちらも魂を込めた”表現”の手なのです。
伝統を、もっと自由に。もっと遠くへ。
2026年1月1日、下田紗弥加さんと吉乃友酒造のコラボレーション企画が正式にスタートしました。
「日本酒と若い世代がもっと自由につながれるように」
「伝統は、守るだけでなく動かすものでもある」
そんな想いから生まれたこのコラボレーションは、単なる企業タイアップではありません。
これは”伝統文化の新しい届け方”を模索する、ひとつの社会実験です。
日本発祥のモータースポーツであるドリフト競技の魅力を世界に発信し続ける下田選手の姿勢は、吉乃友酒造が掲げる「日本酒の新たな魅力を世界へ届ける」というビジョンと強く共鳴します。
ラストメッセージ:逆風の中で始まる物語
伝統は、静かに守られるだけのものじゃない。
時にはエンジン音とともに、風を切って進むことだってできる。
そして、誰かがハンドルを切れば、道はそこに生まれていく。
それが、どんなに未踏のカーブであっても。
吉乃友酒造と下田紗弥加さんの挑戦は、まさにそんな物語です。
速さと深さが交差するとき、新しい文化が加速を始める。
このプロジェクトは、そんな”日本の未来のカーブ”を描こうとしているのかもしれません。
コメント