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【桜が咲いた、その場所はドロミテ】—イタリアの世界遺産に誕生した日本酒の奇跡

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雪解け水の音が聞こえる頃、一滴の「和」がこの地に生まれた

朝霧に包まれたドロミテ山塊。
険しくも美しいその稜線を、じっと見つめる日本人の青年がいました。
彼の名は淺田星太郎(あさだ ほしたろう)
イタリアで米ソムリエ(Riso Sommelier)として生きながら、ずっと心の中に”ある願い”をしまい込んでいたのです。

「日本酒を、世界へ伝えたい」

それは夢というには、あまりに無謀で、でも捨てきれない灯火のような想い。
そしてその灯火が、イタリアの大地にふと重なり、火がつく瞬間が訪れたのです。

偶然の出会いが、運命を変える

すべては一本の湧水から始まりました。
淺田さんが出会ったのは、ドロミテの麓・プリミエーロ・サン・マルティーノ・ディ・カストロッツァで農業を営む家族
その土地から流れる水は、火山岩と石灰岩という異なる地質が交差する土地ならではの、超軟水と超硬水が共存する世界でも稀な水環境だったのです。

「ここでなら、日本酒が造れるかもしれない…」

その直感は、やがて「Hoshitaro Sake Brewery(ホシタロウ・サケ・ブルワリー)」という現実となって、姿を現しました。

異国の大地で、米を蒔く

「ドロミテの大地に、日本酒の花を咲かせる」—その挑戦は、まさにゼロからの出発でした。

ヨーロッパ最大の稲作地帯ピエモンテ州の有機自然米を選定し、現地での発酵環境を整え、日本から杜氏を招いて醸造技術を伝える。
すべての工程が、文化の架け橋となって少しずつ積み上げられていきました。

まるで、日本の伝統が異国の空の下で「第二のふるさと」を見つけたような感覚です。

「サケ?」だったイタリア人に訪れた、舌の革命

「これは…ワインよりも深いかも」

ホシタロウ・サケ・ブルワリーの試飲会に訪れた地元の人々から、そんな声がもれ始めました。
淺田さんは、ただ酒を届けたのではありません。
味の向こうにある”物語”を届けたのです。

「これは私の故郷で飲んでいた味に似ている」
「この香り、まるで雪が解けるときの匂いがする」

イタリア人の感性が、日本酒の中に自分たちの”風景”を見つけはじめた瞬間でした。
その証拠に、2024 年の Milano Sake Challenge では最上位のプラチナム賞を受賞し、現在ではイタリア全国20店舗以上の日本料理店・イタリア料理店で採用されています。

日本酒が、世界遺産の空気にとけていく

ドロミテに生まれたこの酒蔵は、まだ始まりにすぎません。
でもその一歩には、確かな重みがあります。
それは文化を輸出するのではなく、根を張り、混ざり合い、共に生きるという挑戦

発酵補助剤や醸造アルコールなどの添加物を一切使用せず、米・米麹・水のみで仕上げる無添加の純米酒。
さらに 100% グリーンエネルギーを使用し、酒粕はジェラート店やレストランと連携し再利用するなど、サステナブルな酒造りを実現しています。

日本酒は「和」の象徴とも言われます。
その「和」が、ドロミテの雄大な自然と出会ったとき、国境はただの線でしかないことに、私たちは気づかされます。

まとめ:その一滴が、世界をやさしくつなげる

もしあなたが、どこかのレストランで「Hoshitaro」というラベルの日本酒を見つけたら、ぜひ一口味わってみてください。
それは単なるアルコールではありません。
夢と、勇気と、文化の対話が詰まった一滴です。

そしてきっと、こう思うはずです。

「遠く離れた場所で咲いた、この桜のような酒は、なぜこんなにも心に沁みるのだろう」と。

世界遺産の静寂の中で、日本酒は静かに、けれど力強く息づいています。
それは、小さな一歩が大きな未来へとつながる”本当にあった奇跡”の物語なのです。

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