ある晩、フランス人の友人が言いました。
「最近、ワインよりも好きな”サケ”があるんだよ」
ワインの国フランスでそんな言葉を聞く日が来るとは—。
かつての私なら想像もしなかったことでしょう。
でも、今日本酒は海を越え、世界の舌を魅了しています。
そしてその最前線に立つのが、兵庫県・姫路市の老舗、ヤヱガキ酒造です。
フランスの頂で、日本酒が喝采を浴びた
2025 年、フランス・パリで行われた日本酒の品評会「Kura Master」。
この由緒あるコンクールで、ヤヱガキ酒造の2銘柄が最高位の一つである「プラチナ賞」を受賞しました。
しかもそのうちの1本「八重墻(やえがき) 純米大吟醸」は、なんと2年連続の快挙。
ただ美味しいだけではなく”世界の食文化に響く味”であることを証明した結果です。
では「Kura Master」とはどんな大会なのでしょうか?
ワインの国で、日本酒が試される場所
「Kura Master」は、ワインの本場フランスで開催される日本酒の国際コンクールです。
審査員はほとんどがソムリエや星付きレストランの関係者。
つまり日本酒がワインと同じ目線で“香り、味、余韻、そして料理との相性”まで問われる舞台なのです。
そんな厳しい選考を経て、ヤヱガキ酒造のお酒は世界のトップと認められました。
山から湧く水のように、静かに深く広がる味
受賞した「八重墻 純米大吟醸」は、兵庫県産の酒米「山田錦」を 50% まで磨き、低温でじっくり発酵させた逸品。
その味わいは、あたかも朝露のように清らかで、舌の上でふわりとほどけるよう。
香りはメロンや洋梨を思わせるような優しさを帯びながら、奥にはどこか懐かしさが宿る。
それはまるで、日本の田園風景に吹く風のような、控えめだけれど確かな存在感です。
一方、もう一つの受賞作「八重墻 特別純米」は、食中酒として高い評価を得ている特別純米酒。
力強さとやわらかな酸のバランスが特長で、どんな料理にも寄り添う懐の深い味わいです。
この2本は、ヤヱガキ酒造が“伝統と革新の両輪”で醸す酒造りを体現した象徴なのです。
日本酒の未来は、もう世界にある
日本酒と聞くと、まだ「難しそう」「飲み方がわからない」と感じる方も多いかもしれません。
でも、この受賞は、そんなイメージを変える大きな一歩です。
今、日本酒は“知る人ぞ知る趣味”から”世界が認めた文化”へと進化しています。
そして、ヤヱガキ酒造のような蔵元が、それを確かな形で証明してくれているのです。
一杯から始まる、新しい旅
あなたがもし「どんな日本酒から飲めばいいかわからない」と思っているなら、この受賞酒を手にとってみてください。
それは単なる”お酒”ではありません。
それは、日本の四季、土地の記憶、職人の想い— そのすべてが一滴の中に宿る“文化の一杯”です。
世界が恋したこの一滴を、今度はあなたの舌で確かめてみませんか?
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