◆ 「ただの酒」じゃなかった。一杯から始まる小さな物語
「このお酒、いつまでも香りが残るね。なんだか、懐かしい味がする」
それは数年前、冬の終わりに東北を旅したときのことでした。
小さな酒蔵を訪ね、出された一杯の日本酒を口にした瞬間、身体の奥にまで染み込んでくるような感覚があったのです。
その場にいた蔵の方が、にこやかにこう教えてくれました。
「これはね、春を待つ冬の酒なんですよ」
その言葉を聞いて、ただのアルコール飲料だと思っていた”日本酒”が、まったく違う意味を持って立ち上がってくるのを感じました。
その味には、季節の移ろいと人の手仕事、土地の記憶が重なっていたのです。
◆ 國酒フェア 2025とは?──ユネスコ無形文化遺産「伝統的酒造り」の祭典
そんな日本の酒文化を体験できる夢のようなイベントが、2025年に開催されます。
その名も「國酒フェア 2025」。
大阪・関西万博の開催にあわせて企画された、全国約 1,600の酒類メーカーが集結する大規模なフェスティバルです。
このフェアでは、日本酒はもちろん、本格焼酎、泡盛、本みりんといった多種多様な”國酒”が一挙に紹介されます。
これまで「日本酒フェア」と「本格焼酎・泡盛フェア」として東京と福岡で別々に開催されていたイベントが初めて合体し、ユネスコ無形文化遺産に登録された日本の「伝統的酒造り」から生まれる國酒の魅力を伝えます。
◆ 國酒とは何か?──味を超えて「時間」を語るもの
“國酒(こくしゅ)”という言葉に、あまり馴染みがない人もいるかもしれません。
國酒とは、日本で伝統的につくられてきた酒類のこと。
たとえば、日本酒、本格焼酎、泡盛、本みりんなどが含まれます。
これらに共通するのは、その土地の自然、風土、歴史が色濃く反映されていること。
そして、何よりも”発酵”という営みによって生まれているという点です。
國酒を味わうということは、つまりその地域の時間を味わうことでもあるのです。
何十年、あるいは百年を超えて受け継がれてきた製法や想いが、一杯の中に詰まっています。
國酒は、時間を”翻訳する”飲み物。
それを味わう私たちは、知らぬ間に誰かの記憶と交差しているのかもしれません。
◆ 五感で楽しむ國酒フェアの魅力
國酒フェア 2025の魅力は、ただ「試飲ができる」イベントというだけにとどまりません。
このイベントでは、お酒の試飲・販売に加え「伝統的酒造りエリア」として國酒に関する文化や伝統技術などについても学べるエリアが併設されます。
会場には全国の蔵元が集まり、自慢の酒とともに、直接コミュニケーションを取りながら仕込みのエピソードや土地の話を語ってくれます。
その一言があるだけで、ただの”美味しい酒”が、記憶に残る”物語のある酒”へと変わっていきます。
また、イートインコーナーも設置され「感じ、学び、共有する」イベントとして、五感のすべてが満たされることでしょう。
◆ 海外も注目! 國酒がつなぐ文化の架け橋
國酒フェア 2025は、日本国内だけで完結するイベントではありません。
大阪・関西万博に連動した開催ということで、様々な国からの訪日外国人の来場も予想される国際的な舞台でもあります。
ここ数年、日本酒や焼酎の輸出は右肩上がり。
和食の広がりとともに「繊細な味わい」や「発酵の技術」が海外でも高く評価されるようになってきました。
今回のフェアでは、国内外の需要促進にもつながるよう取り組んでいくとのことで“國酒のグローバルデビュー”を飾る場所ともなるでしょう。
文化は、言葉だけでは伝わりきらないものです。
でも、一杯の酒なら、誰もが”感じる”ことができる。
國酒には、そんな不思議なちからがあります。
◆ 國酒が示す、これからの豊かさ
大量生産とスピードが求められる時代において、國酒が持つ価値はむしろ対照的です。
時間をかけて育てられ、微生物たちの声に耳を傾けながら醸される酒は“ていねいに生きること”の象徴のようにも感じられます。
特に若い世代の間では「作り手の顔が見えるモノ」「物語のある体験」を大切にする価値観が広がっています。
そうした人たちにとって、國酒は単なる飲み物ではなく、ライフスタイルや思想に共鳴する文化的体験として響くはずです。
◆ あなたの物語に、國酒という一節を
國酒とは、言葉にできない想いを、静かに伝える”味の手紙”のような存在です。
それは、季節のうつろい、誰かの記憶、土地のぬくもりを含んだ、深い余韻のあるメッセージ。
一杯の酒が、心の扉をそっとノックする。そんな瞬間に出会えるのが、この「國酒フェア 2025」なのです。
いつもよりほんの少し、ゆっくりと味わってみてください。
その一杯が、あなたの人生に小さな灯をともすかもしれません。
◆ イベント開催概要
イベント名:國酒フェア 2025
開催日:
2025年6月14日(土)・15日(日)
第1部 10:00~13:00、第2部 15:00~18:00(14日)
第3部 10:00~13:00、第4部 15:00~18:00(15日)
※各部 2,500名限定入替制
会場:
ATC ホール(アジア太平洋トレードセンター)
大阪府大阪市住之江区南港北2丁目1-10
内容:
全国日本酒フェア、本格焼酎・泡盛フェア、伝統的酒造りエリア及びイートインコーナーなど
参加料:
・一般チケット:各部 5,000円(税込)
・学生チケット:各部 2,000円(税込/20-25歳以下の学生限定)
参加形態:
予約制(先着順)
※チケットの販売開始時期等詳細は追って専用サイトでご連絡いたします。
※当日チケット販売は完売していない場合のみ実施いたします。
公式サイト:https://kokushufair.com(2025年4月下旬公開予定)
◆ 結びに
2025年6月、大阪。
一杯の國酒が、あなたと世界をつなぐ日がやってきます。
その場に、あなたもぜひ立ち会ってみてください。
それはきっと、味だけでなく、記憶に残る体験になるはずです。
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