「同じ米でも、育つ土が違えば、味も変わる。じゃあ、米じゃなくて”土地”を醸してみたらどうなるんだろう?」
そんな素朴な問いから始まった挑戦が、いま日本酒の世界に静かな革命を起こしています。
「酒米」と聞いて、すぐにその奥深さを語れる人は多くないかもしれません。
けれど、おいしい日本酒を口にした瞬間、誰もが感じる「これは、ただものじゃない」というあの感動。
その背景には、酒米づくりから仕込み、瓶詰めに至るまで、妥協のない”ものづくり”があるのです。
そして今、その最前線に立つのが「幻の米」という名の日本酒。
これは、単なるプレミアム酒ではありません。
ひとつの思想を、そのまま瓶に詰めたような存在です。
「雄町」という酒米に、再び光をあてる
「幻の米」の主役は、酒米のルーツとも言われる「雄町(おまち)」。
このお米、実は明治時代には全国の酒造米の大半を占めていたほどの存在。
しかし、病気に弱く栽培が難しいことから徐々に姿を消し、現在ではごく一部の地域でしか作られていません。
そんな「雄町」に、あえてこだわったのが、岡山県の酒造「利守酒造」です。
このプロジェクトの特異な点は「酒米を仕入れる」のではなく「自分たちで米づくりから始める」というところ。
しかもそれは”よい酒米を育てる”ことが目的ではなく”土地の思想を酒にする”という、まるで哲学のような取り組みなのです。
「ドメーヌ発想」とは何か?
ワインの世界には「ドメーヌ」という言葉があります。
ブドウの栽培から醸造、瓶詰めまでを一貫して行うワイナリーのことです。
その土地の風土や気候、農家の思想までもワインに映し出すこの考え方は「テロワール(風土の個性)」という概念と深く結びついています。
日本酒の世界にもこの発想を取り入れられないか。
その答えが「幻の米」なのです。
利守酒造は、岡山県赤磐市で長年酒づくりに携わってきたプロ集団。
彼らが作る雄町米は、品種ではなく「土地の思想」そのものといえます。
朝露に濡れる稲の香り、吹き抜ける風、土の感触。
それらすべてを知る酒蔵が自ら育てた米を、丁寧に仕込み、ひとつの酒として昇華させました。
「幻の米」が届ける、味わいの奥行き
この日本酒は、単に「おいしい」を超えた体験を提供してくれます。
ふくよかで丸みのある口当たり、鼻に抜ける芳醇な香り、余韻に残る米の甘みと奥深さ。
それはまるで、ひとつの風景を飲み干すような感覚です。
「どこか懐かしいけど、新しい」
飲んだ人の多くがそう語るのは、おそらくこの酒が、誰かの手によって丁寧に育まれた時間や場所の記憶を、静かに語りかけてくるからかもしれません。
地酒の新たな可能性を開く
日本酒の世界には、長い伝統があります。
けれど「幻の米」はその伝統にただ従うのではなく、新たな視点で問い直します。
「土地を醸すとは、どういうことか?」
「酒づくりとは、どこから始まるべきか?」
この酒は、そうした問いを静かに、けれど力強く私たちに投げかけてくるのです。
また、地域経済や農業との関わりという点でも、この取り組みは大きな意味を持っています。
酒蔵が自ら農業に取り組み「土地の価値」を追求していく。
こうした循環型のモデルは、今後の日本酒づくりの新たな指標となるでしょう。
最後に――土地が語る日本酒を、あなたへ
「幻の米」は、ただの高級日本酒ではありません。
それは、岡山の土地が持つ記憶、蔵主の覚悟、蔵人の技術、そして「風土を酒にする」という思想が結晶化した一本です。
この冬、もし特別な一杯を探しているなら、ぜひ「幻の米」を手に取ってみてください。
そして、ひとくち味わったときには、目を閉じてその背景にある”土地の物語”を感じてみてください。
きっと、いつもとは違う「日本酒の奥深さ」に触れられるはずです。
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