「日本のお米じゃないと、日本酒はできない」
…そんな”常識”が、静かに塗り替えられようとしています。
「えっ、日本酒って外国のお米でも作れるの?」と驚いたあなたへ
スーパーで手に取った一本の日本酒。
ふとラベルを見ると、そこには「海外産米使用」の文字。
「え?日本酒って、日本のお米じゃないとダメなんじゃ…?」
そう思った方、実は少なくないはずです。
でも実は今、老舗酒蔵の月桂冠が、日本酒づくりの”常識”を大胆に塗り替えようとしているんです。
老舗・月桂冠が挑んだ「非常識」
京都・伏見に蔵を構える月桂冠。
日本酒の伝統を支え続けてきた名門です。
そんな同社が初めて挑んだのが、海外産のお米だけを使った日本酒づくり。
「伝統に反する」
「風味が落ちる」
そんな懸念の声をあえて受け止めながらも踏み出したのは”未来を見据えた一歩”でした。
世界の食卓へ。なぜ”海外米”にこだわったのか?
理由はシンプルですが、とても大切なことです。
それは、日本酒の可能性を世界に広げるためです。
いま、アメリカやフランス、オーストラリアなどで日本酒の人気が高まりつつあります。
でも、地球温暖化によって酒米の栽培環境が年々厳しくなり、収穫量の減少や価格高騰が問題となっています。
だからこそ、20~30 代の若手社員が中心となって 2021 年から研究を開始。プロジェクトの合言葉は「世界の米で、世界の SAKE を」でした。
これは、単なる”代用品”ではありません。
むしろ“本物の味”を世界の人に届けるための挑戦だったのです。
難関だった「海外産米」を、どうやって酒に変えたのか?
研究チームが試したのは、アフリカ、アジア、北南米、イタリア…様々な国のお米。
ベトナム産の掛け米にタイ産のこうじ米、インド産の掛け米にタイ産のこうじ米など、様々な組み合わせで試行錯誤を重ねました。
国産米とは異なり、発酵の進み方が「予測不能」で、細かいケアが必要でした。
まるで、異国の布を使って日本の着物を仕立てるような繊細な仕事。
その努力が実を結び、国産米とは一線を画した味わいの、面白い酒が誕生したのです。
舞台は万博。伝統と革新が出会う瞬間
このお酒は、2025 年の大阪・関西万博でお披露目される予定です。
ベトナム産とタイ産の組み合わせで作られた清酒は、冷やすとパイナップルのような香りが立つのが特徴。
一方、インド産とタイ産の組み合わせでは、焼きたてのバゲットやポップコーンのような香ばしい香りが口の中に広がります。
伝統×多様性=未来の味として、世界中の人々を迎える一杯になるでしょう。
伝統って、変えちゃいけないもの?
私たちは「伝統」と聞くと”守るもの”と思いがちです。
けれど、本当に大切なのは、時代に合わせて「生き続ける」こと。
守るだけでは、やがて風化してしまう。
変える勇気こそが、次の世代に伝統をつなぐ鍵になるのかもしれません。
最後に:その一杯が、世界をつなぐ
海外産米で造られた月桂冠の日本酒。
それはただの”新製品”ではありません。
伝統の職人技とグローバルな視点が交差して生まれた、文化のかけ橋なのです。
もし、あなたがこのお酒に出会うことがあったら、どうか一口、ゆっくり味わってみてください。
その一杯には、国境を越える希望と、未来への静かなメッセージが詰まっているはずです。
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