もし、100 年後の人たちが食卓を囲んでいる光景を想像できるとしたら—そこに並ぶ料理やお酒は、どんな味がすると思いますか？
今、北海道の小さな町で「未来の食文化」を真剣に仕込んでいる人たちがいます。
それは、白糠（しらぬか）町の漁師と、釧路市の酒蔵が手を取り合って生まれた、まさに”時代を越える一皿と一杯”のプロジェクトです。
その名も「極寒ぶり」×「五色彩雲（ごしきのくも）」による、100 年先を見据えた共創です。
極寒の海が育てた”希望の魚”
北海道白糠町。
この町の沖合は、厳しい寒さが支配する「極寒の海」です。
太平洋沖の暖流と寒流が交わる漁場で育まれたブリは、身が引き締まり、脂のりも抜群。
まさに”自然が磨いた宝石”と呼ぶにふさわしい存在となっています。
この「極寒ぶり」は、実は白糠町の漁師たちが未来の海の変化に向き合って始めた挑戦の一つです。
地球温暖化の影響で、かつて秋の定置網漁を支えていた「秋鮭」の漁獲量は減少し、その一方でブリの水揚げが急増しています。
かつては北海道では食文化として根付いていなかったブリを、新たな地域資源として育てる挑戦が始まったのです。
「極寒ぶり」として認定されるのは、白糠町で水揚げされたブリのうち、船上活〆（放血処理）で一尾ずつ丁寧に扱い、魚体7kg以上の天然ブリのみ。
それは単なる「特産品」ではなく「未来の世代が食べられる魚を守る」という、漁師たちの覚悟と愛の結晶なのです。
食卓を照らす、五色の雲
そして、白糠の極寒ぶりに寄り添うように誕生したのが、釧路市の地酒「五色彩雲（ごしきのくも）」です。
この名には、こんな想いが込められています。
それは、古来より吉兆とされる空の彩雲。
自然の神秘と美しさを表現し、飲む人に希望と幸福を届けたい—そんな祈りです。
五色彩雲を手がけるのは、釧路の地で百有余年、酒を醸し続ける老舗酒蔵「福司酒造」。
清らかな水と冷涼な気候が育む芳醇な酒は、長い歴史の中で培われた伝統と技術を、今も脈々と受け継いでいます。
この「五色彩雲」は、福司酒造の新たな挑戦を象徴するブランドとして誕生しました。
今回の「五色彩雲 Nusamai」は、釧路川の最も下流に架かる橋「幣舞橋（ぬさまいばし）」にちなんだ名。
アイヌ語の「ヌサ・オ・マイ」（幣場の・ある・ところ）に由来し、土地と祈りの象徴でもあります。
北海道産米を原料に北海道の気候を活かして発酵させることで、その土地の味わいを引き出しています。
極寒ぶりの脂に寄り添いながら、口の中で優しく溶けるように広がる旨味。
寒い期間が長い地域ならではの燗酒の設計も考慮されており、ぬる燗でゆっくり楽しむこともできます。
まるで、凍てついた大地に差し込む朝陽のように、希望を感じさせてくれる一杯です。
「100 年後の食文化」を、本気で考えるということ
この取り組みは、ただの地域活性化や商品開発ではありません。
それは「100 年後の誰かの食卓に、今の私たちがどんな”種”を蒔けるか？」という、時間を超えた挑戦なのです。
私たちが当たり前に食べている魚や野菜、飲み物の数々。
その背景には、自然環境や人の営みが複雑に絡み合っています。
たとえば、白糠町の漁師が海の変化を逆手に取り、ブリに新しい価値を見出す姿。
それは、変わりゆく海を見つめ「次の世代の漁師にも魚を残してやりたい」という静かな願いの表れです。
釧路の酒造りもまた然り。
福司酒造が考える「地酒は土地の風土と共にあり、人々の暮らしに寄り添うもの」という理念は、単なる「美味しいお酒」を超えて「未来に語り継がれる一杯」を目指しているのです。
食べるという行為は、未来とつながること
私たちは毎日、何かを食べて生きています。
でもその一口が「未来にまでつながる選択」だとしたら？
ちょっとだけ、見える景色が変わるかもしれません。
極寒ぶりと五色彩雲に込められたメッセージは、とてもシンプルです。
「過去を想い、未来を仕込む」
それはつまり「いまを丁寧に生きること」。
この一皿と一杯を味わうことで、私たちは 100 年先の誰かに”美味しい”を届けることができるのかもしれません。
さいごに 〜 あなたの今日の食事にも、未来が宿る 〜
今夜の食卓に、何を並べますか？
北海道の極寒ぶりを味わいながら、釧路の空に浮かぶ彩雲を思い浮かべてみてください。
そのひとときが、100 年後の誰かの”いただきます”につながっているとしたら—
それって、とてもロマンのあることだと思いませんか？
コメント