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人間の脳のように考えるAI、ついに登場?『Coconut』が示す驚きの進化

AI

はじめに

私たちが使う ChatGPT のような大規模言語モデル(LLM)は、言語そのものを使って推論を行う「チェイン・オブ・ソート(CoT、Chain of Thought)」という手法が注目されています。
この方法では、モデルが考える過程を「次に何をするか」を一歩ずつ説明する形で可視化できます。

しかし、最新の研究では、「言語」だけを使うのではなく、連続的な潜在空間(Continuous Latent Space)で推論を行う新たな方法が提案されました。
その名も「Coconut(Chain of Continuous Thought)」。
このアプローチにより、モデルの思考がどのように進むのかが大きく変わるかもしれません。

この Coconut の基本的な仕組み、重要性、メリットについて、わかりやすく解説します。

これまでの課題:言語ベースの推論の限界

これまでのLLMは「言語」を使って推論を行っていましたが、いくつかの課題がありました。
まず、すべての単語(トークン)に同じだけの計算資源が使われるという問題があります。
実際には、一部の単語だけが「推論」に重要であるにもかかわらず、すべてのトークンに等しい処理が行われます。

また、通常のチェイン・オブ・ソート(CoT)は直線的な推論を行います。
ステップごとに1つの選択肢しか進めないため、途中で間違えた場合は最初からやり直す必要があります。
これでは効率が悪く、複雑な推論には不向きです。

さらに、これまでの手法は人間の思考と異なります。
人間の脳は必ずしも言語を使って推論するわけではなく、ニューロイメージングの研究によれば、推論の際に脳の言語処理領域が活発化しないケースが多いことが分かっています。
これらの課題を解決するため、Coconut(連続的な潜在空間での推論)が生まれました。

Coconut の革新的な仕組み

Coconut の核心は、言語を介さずにモデルの「考えの状態」を潜在変数(continuous latent space)として直接扱うことにあります。
簡単に言えば、「考え」を言葉に変換せずに、モデルの内部的な「隠れ状態」をそのまま次のステップの入力として使います。

これまでの推論では、言葉(テキスト)を一歩一歩生成し、それを次の推論の材料として使っていました。
しかし、Coconut の推論では、LLMの「隠れ状態(hidden state)」を次のステップの入力に直接使います。
これにより、言語を介さずに内部での思考を続けることが可能になります。

言い換えると、通常の CoT が「考える→話す→考える」という流れであったのに対して、Coconut は「考える→考える→考える」と、話さずに進む仕組みです。

なぜ Coconut が優れているのか?

Coconut が注目されている理由は、効率性、探索的な推論能力、人間の思考に近いモデルの実現といった複数の側面において、画期的な変化をもたらすからです。

まず、Coconut は効率的な推論を可能にします。
これまでの手法では、全ての推論ステップで言葉を生成する必要がありましたが、Coconut では「隠れ状態」を使うため、言葉を生成する必要がなくなります。
その結果、推論に必要なトークン数が従来の25%以下に減少し、同等以上の精度を実現しています。

次に、探索的な推論も可能になります。
これまでの推論が「一本の道を進む」イメージだったのに対し、Coconut は「複数の道を同時に試す」イメージです。
これにより、特定の道が間違っていても、他の選択肢をすぐに試すことができるため、より柔軟な推論が可能になります。
また、途中で間違ったときでも、Coconut は異なる選択肢を同時に保持しているため、巻き戻し(バックトラック)も可能です。

さらに、Coconut は人間の推論に近いモデルを実現できる可能性を秘めています。
人間は、頭の中で「こうしたらどうだろう?」「これがダメなら他の手を試そう」と考えることができます。
Coconut の推論プロセスはこれに似ており、人間の思考プロセスを再現するAIモデルの可能性が広がります。

実験結果:どれくらい効果があるのか?

Coconut の有効性は、いくつかのタスクで実証されています。

たとえば、GSM8k データセット(数学の問題集)では、Coconut は従来の CoT を上回る性能を発揮しました。
数学的な問題を解く際に、CoT は直線的な推論を行いますが、Coconut は探索的な思考が可能なため、より複雑な問題にも対応できます。

さらに、論理的な推論が求められる ProsQA タスクでは、Coconut が CoT を大きく上回る精度を示しました。
これにより、複雑な推論や計画が必要な場面でも、Coconut の有用性が証明されています。
また、推論に必要なトークン数が従来の手法の約1/4に減少し、より少ない計算リソースでの推論が可能になりました。

今後の展望

Coconut は、言語モデルの新たな進化の形を示しています。
特に、より大規模な事前学習に Coconut が統合されれば、汎用的なAIモデルがさらに強化される可能性があります。
これにより、探索型AIの強化が期待されます。
ゲームのプレイや、動的な計画立案が必要なタスク(自動運転、ロボティクスなど)に Coconut が活用されれば、より柔軟な意思決定が可能になるでしょう。

まとめ

Coconut(連続的な潜在空間での推論)は、LLM が言語に縛られずに「考える」方法を提供します。
これにより、より少ないトークンで効率的な推論が可能になり、より高度な計画や探索が可能になります。
人間の思考に近いモデルが実現可能になる点でも、Coconut はAIの推論能力を飛躍的に向上させるポテンシャルを秘めています。
これからのAIの進化が楽しみですね!

参考:Training Large Language Models to Reason in a Continuous Latent Space

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