「あれ、前にも話したのに…」
そんな体験、ありませんか?
たとえば、あなたがよく行くカフェで、店員さんが毎回「ご注文は?」と聞いてくるとします。
何度も「ラテをホットで」と答えているのに、いつまでも覚えてもらえない。
ちょっと寂しい気持ちになりますよね。
AIとの会話でも、同じようなことが起きていました。
ChatGPT に何度も同じことを説明しなければいけなかったり、前回話した内容を覚えていなかったり。
便利ではあるけれど、なんだか”一方通行”の会話のように感じたことがある人も多いのではないでしょうか。
でも、ついにその日がやってきました。
ChatGPT が「あなたの記憶」を持ち始めた
OpenAI が 2025 年4月10日に発表した最新アップデートにより、ChatGPT は過去の会話内容に基づいて回答をカスタマイズできる「メモリー機能」を導入しました。
つまり、会話の文脈をまたいであなたのことを覚え、より自然で深いつながりを持ったやりとりが可能になるのです。
これは、これまでの「1回限りの会話」から「積み重ねられる対話」への進化とも言えるでしょう。
たとえるなら、ChatGPT は今までメモ帳を持たずにあなたと話していたようなもの。
でもこれからは、しっかりノートを取りながら、前回話した内容や、あなたの好み、関心事を覚えていてくれる相手になるのです。
どんな風に変わるの?──具体的な変化を見てみよう
新機能のポイントは主に以下の3つです。
- 過去の会話内容を活用
設定で「保存されたメモリーを参照する」が有効になっていると、これまでに話した内容を基に回答をカスタマイズします。
テキスト、音声、画像生成の機能すべてに会話のコンテキストが追加されます。
まるで友達のように、以前の会話を覚えていてくれるのです。 - 記憶のオン/オフが選べる
「全部覚えてほしいわけじゃない」という人も安心してください。
記憶機能はユーザーが自由に管理できます。
特定の内容は忘れさせることも、そもそも記憶機能をオフにすることも可能です。
また「Temporary Chat」(一時的なチャット)機能を使えば、会話が保存されないオプションもあります。 - よりパーソナライズされた体験へ
学習のサポート、仕事の相談、創作活動のパートナー。
ChatGPT の役割は人によって異なりますが、個々の目的に応じて会話の質がどんどん最適化されていくのです。
まるで「あなた専属の知的アシスタント」ができたような体験になるでしょう。
なお、この機能は当初 ChatGPT Pro および Plus の有料プラン利用者向けに提供されます。
イギリス、EU、アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイスの利用者は、現地の規制に対応するための追加審査が必要なため、現時点では利用できません。
無料版ユーザーへの提供時期については、OpenAI は「現時点では有料プランへの提供に注力している」と述べています。
でも、記憶を持つAIってちょっと怖くない?
「AIが自分のことを覚えている」と聞くと、少し不安になる方もいるかもしれません。
OpenAI もそこには配慮しており、ユーザーが情報の保存・削除をいつでも管理できる仕組みを整えています。
また、AIの”記憶”はあくまでユーザー体験を向上させるためのもので、勝手に他人に情報を開示することはありません。
ChatGPT に「何を記憶しているか」を直接尋ねることもできます。
実は、OpenAI は昨年すでに、ユーザーのリクエストに応じて特定の詳細を忘れたり記憶したりする機能を追加していましたが、その機能はユーザーが明示的に指示する必要がありました。
今回のアップデートはそのプロセスをよりシームレスにするものです。
言うなれば、ChatGPT は「忘れることもできるAI」。
それは、人間が思いやりを持って記憶を扱うのと同じように、AIにも”節度ある記憶”が求められているということです。
なお、同様のメモリー機能は Google が2月に Gemini でリリースしています。
「これからのAI」は、もっと”あなたらしさ”に寄り添う
AIとの会話が、ただの情報交換ではなく「つながり」や「継続」の感覚を持つようになった今、私たちの暮らしはさらに豊かに、そして温かくなっていくかもしれません。
たとえば、長期的な目標を一緒に追いかけたり、過去のやりとりを振り返って感情の変化を見守ったり。
ChatGPT は、ただのツールから“あなたの成長を見守る存在”へと進化を遂げつつあるのです。
今日のまとめ:AIとの関係にも、ストーリーがある
これまでのAIは「質問に答えるだけ」の存在でした。
でもこれからは、あなたと一緒に物語を紡いでいくパートナーになります。
「覚えていてくれてありがとう」──そんな一言が、AIとの対話にも生まれる日が来るなんて、少し前までは想像もできませんでしたよね。
未来の対話は、もっと温かく、もっと人間らしい。
ChatGPT が「記憶」を手にしたこの一歩は、そんな未来への扉を静かに、そして確かに開いたのかもしれません。
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