朝、スマートスピーカーが今日の天気を教えてくれる。
出かける直前、AIが「傘を持って」と教えてくれた。
でも、ふと思う。
「このAI、本当に私のことを考えてくれているのかな?」
私たちは今、AIに囲まれた日常を生きています。
便利なはずなのに、どこかで感じてしまう”うっすらとした不安”。
まるで完璧に見える恋人が、実は何を考えているのか分からないような──そんなもどかしさ。
なぜ、AIは”信じきれない存在”になってしまったのでしょうか。
そしてその不安は、取り除くことができるのでしょうか。
なぜ私たちはAIを「信じられない」のか?
AIが日々進化し、私たちの暮らしに深く入り込んでいるのは間違いありません。
でも、多くの人がどこかで「信用しきれない」と感じているのも事実です。
その原因のひとつは“見えない”ことへの不安です。
AIがどう学んでいるのか、どんな目的で使われているのか──その「中身」は、ほとんどブラックボックスのまま。
まるで、密室で行われる審査の結果だけを渡されるようなもの。
過程が見えなければ、結果にも疑いを持ってしまうのは当然です。
Camunda の最近のレポートによると、組織の 84% がAIアプリケーションの透明性の欠如に規制コンプライアンスの問題を起因していると指摘しています。
Web3 という”透明なインターネット”が登場した
この「見えない不安」を変える可能性を持つのが「Web3(ウェブスリー)」です。
これは、ブロックチェーン技術を基盤にした”分散型のインターネット”のこと。
たとえば今のネット(Web2)は、Google や Amazon など特定の企業に情報が集中している世界。
一方、Web3 は「情報の主導権をユーザー自身が持てる世界」です。
すべてのやり取りがブロックチェーンという”透明な帳簿”に記録され、誰でもその履歴を確かめることができます。
まるで、誰もがのぞける”オープンキッチン”のように、AIがどう作られ、どう使われるかが見える世界です。
Web3 とAIの組み合わせが生む、まったく新しい信頼のカタチ
すでにいくつかのプロジェクトが、この考え方を実現しようと動き出しています。
たとえば Microsoft が支援する「Space and Time (SxT)」というプロジェクトでは、改ざん不可能なデータフィードを提供し、AIが依存する情報が本物で正確であり、単一の組織によって変更されていないことを保証しています。
SxT の革新的な「Proof of SQL」プルーバーは、クエリが改ざんされていないデータに対して正確に計算されることを保証し、ブロックチェーン履歴内の計算を証明します。
また「Cartesi」というモジュラーブロックチェーンプロトコルは、AI推論がオンチェーンで行われることを保証します。
Cartesi の仮想マシンにより、開発者は TensorFlow、PyTorch、Llama.cpp などの標準AIライブラリを分散型実行環境で実行でき、オンチェーンAI開発に適しています。
これは、ブロックチェーンの透明性と計算AIの組み合わせです。
これらの技術は、AIが”企業のもの”から”みんなのもの”へと変わっていくプロセスとも言えるでしょう。
国連の予測によれば、AIは 2033 年までに約 4.8 兆ドル(ドイツ経済とほぼ同規模)の市場になると見込まれています。
未来への一歩は、まず「仕組み」から
信頼は、願っても生まれません。
信頼は、”見える仕組み”の中で、少しずつ育っていくものです。
Web3 は、その「見える仕組み」をインターネットにもたらします。
そしてその延長線上に“誰もが安心して使えるAI”という未来があります。
たとえるなら、これまでのAIは曇った窓の向こう側にあった存在。
Web3 は、そのガラスを少しずつ磨いてくれる”透明の布”のようなものです。
ゼロ知識証明(Zero-Knowledge Proofs、ZKPs)などの暗号技術を使用することで、プライバシー保護も同時に確保されます。
最後に──AIと共に生きる時代を、私たち自身の手で
「AIは怖い」
そう感じるのは、きっとあなたが”ちゃんと向き合いたい”と思っているから。
そしてその気持ちこそが、AIとの新しい関係をつくる第一歩になります。
これまでのAI教育のナラティブは、その危険性に焦点を当ててきました。
今後は、AIの能力と限界についてのユーザーの知識を向上させ、ユーザーが搾取されるのではなく、エンパワーされるようにしていくべきです。
未来は、どこかの天才が決めるものではありません。
未来は、私たちが「信じられる仕組み」を選び取ることで、形づくられていくのです。
Web3 は、その選択肢のひとつ。
もし今、あなたの心にほんの少しでも光が差したなら──それは、AIとよりよい関係を築こうとする未来の自分からのメッセージかもしれません。
コメント