スマホに初めて触れた日のこと、覚えていますか?
ガラケーからスマホに変わったとき、私たちの生活は大きく変わりました。
地図を持たなくても迷わなくなり、写真は一眼レフ並みに撮れるようになり、誰もが自分の「メディア」を持つようになった。
――そして今、それ以上の変化が私たちの目の前に迫っているのをご存じでしょうか。
その主役が「生成AI(Generative AI)」です。
今回は、世界的なAI専門家であり、生成AIに関する本を最初に出版した著者の一人である Nina Schick 氏のインタビューから、生成AIがもたらす未来のかたちについて、やさしく、でも深く掘り下げてみたいと思います。
人間の”創造”を超える? 生成AIの本当の姿
生成AIとは、文章、画像、音声、動画…ありとあらゆる「コンテンツ」をゼロから生み出す人工知能のこと。
ChatGPT や DALL-E、Midjourney といったツールの登場で、その存在は一気に身近になりました。
Schick 氏は、生成AIを「あらゆる人間の創造的・知的活動のための新しい燃焼エンジン」と表現します。
これまでごく一部の専門家やクリエイターだけが作り出せたものを、今や誰もが、わずか数秒で、しかもプロ並みに創れる時代になりつつあります。
でも――この強力な技術には、課題も伴います。
チャンスとリスク。二つの顔を持つテクノロジー
AI革命がもたらす政治的・社会的影響
Schick 氏は、AIが社会を再形成する能力がいかに深遠であるかを考えると、この「AI革命」が私たちの世代における最も重要な政治的問題の一つになることは明らかだと指摘します。
過去30年間で、インターネット、スマートフォン、クラウドコンピューティングによって推進された情報革命が地政学的な力になったのを見てきました。
今、私たちはその上にAI革命とそれを支えるデータを重ね合わせており、その影響は地震のようなものです。
AIは政治に影響を与えるだけでなく、多くの点で政治そのものの基盤になるでしょう。
一方、ビジネスでは「新しい機会の創出」が始まっている
ただし、すべてが懸念材料というわけではありません。
Schick 氏は、企業がデジタル変革、特にAIの時代において、現在私たちが経験している概念的なパラダイムシフトをまず理解することが重要だと説きます。
競争力を維持し戦略的優位性を得たいのであれば、今こそ生成AIをビジネスモデルにどのように思慮深く効果的に統合できるかを調査し始める時です。
これには、AIが長期的な価値を提供できる優先領域の特定が含まれます—短期的なものだけではなく。
特に、生成AIのワーキンググループを設置してこれを検討すれば、ビジネスは変革され、AIを使用してプロセスを変革している他の企業と競争できるようになるでしょう。
そして、私たちはどう変わるのか?
この変化は避けられません。
でも、恐れる必要もありません。
むしろ今、私たちに問われているのは――「この技術をどう倫理的かつ責任を持って展開するか?」という問いです。
Schick 氏は、AIと大規模データをめぐる倫理的議論が、激しく政治的かつ非常に重要なものになると予測します。
これは今後何年にもわたって主要な問題であり続けるでしょう。
私たちが扱っているのは、経済を再形成し、労働市場を再定義し、社会の構造自体を根本的に変える可能性を持つ技術だからです。
まとめ:未来は、つくるもの――私たちの手で
ルネサンスの時代、人々は印刷技術の登場によって、知識の独占から解放されました。
今、私たちは同じように、AIという「新しい知のインフラ」と出会っているのかもしれません。
Schick 氏が述べるように「究極的に、これは単なる技術革新の物語ではありません。これは人間性についての物語なのです。人間によって構築され方向づけられる指数関数的な技術である生成AIは、私たちの働き方だけでなく、生き方も変えるでしょう。それは人間であることの意味についての私たちの理解にさえ挑戦するでしょう」
未来を恐れるより、問いかけてみましょう。
「この力で、どんな社会をつくりたいですか?」
一人ひとりの問いが、これからの時代を形づくっていきます。
そしてその第一歩は「知ること」「考えること」「対話すること」から始まります。
参考:Nina Schick, author: Generative AI’s impact on business, politics and society
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