近年、生産性向上が喫緊の課題となる中、生成AIの活用が注目を集めています。
生成AIは業務効率化や生産性向上に貢献できると期待されていますが、グローバルの汎用モデルを利用するだけでは、本格的な課題解決に至らないケースも出てきています。
そこで求められているのが、日本語に特化した高性能な生成AIモデルと、企業における生成AIの実装を支援する基盤です。
この度、そうしたニーズに応える動きが、AI企業と通信キャリアの業務提携という形で実現しました。
資本業務提携の概要
2024年3月18日、以下の3社が資本業務提携を締結しました。
- 株式会社ELYZA(東京大学発AI企業)
- KDDI株式会社
- KDDI Digital Divergence Holdings株式会社
この提携により、ELYZAはKDDIグループの連結子会社となります。
両社は強みを生かして生成AIの社会実装を推進していく計画です。
3社が提供する主なサービス
1. オープンモデル活用型の日本語汎用LLM開発・提供
ELYZAは2019年からLLM(大規模言語モデル)の研究開発に注力してきました。
2024年3月には、日本語特化の「ELYZA LLM for JP」を発表し、グローバルモデルに匹敵する700億パラメータの高性能LLMの開発に成功しています。
今後は、KDDIグループの計算基盤とELYZAの技術力を組み合わせ、オープンモデルを活用した日本語汎用LLMの研究開発を加速。
高性能な日本語LLMのAPIサービスも2024年春から順次提供する予定です。
2. 領域特化型のLLM開発
各企業や業界、業務に特化したLLMを開発・提供することで、汎用LLMでは解決が難しい課題に対応していきます。
こうした領域特化型LLMでは、必要に応じてグローバルモデルに追加学習を施すことで、個別領域でのカスタマイズと性能改善を図ります。
国内製のLLMならではの特長として、必要最小限の規模に小型化できるため、消費電力やコストを抑えつつ高速なレスポンスが可能になります。
機密性の高い情報を扱う場合でも安心して活用できるメリットもあります。
3. 生成AIを活用したDX支援サービス・AI SaaSの提供
KDDIグループはこれまでも「アイレット」や「KDDIアジャイル開発センター」など、DXを支援する各種サービスを提供してきました。
今回の提携により、ELYZAの汎用・領域特化LLMと、KDDIグループのデジタル技術を組み合わせることで、生成AIを活用したDX支援サービスが一層充実します。
また、生成AIを搭載したAI SaaSの共同開発・共同販売を行い、より多くの企業や自治体への生成AI導入も推進していく計画です。
注目の領域別サービス:コンタクトセンター特化LLM
提携を通じて特に注目されているのが、KDDIグループ企業のアルティウスリンクと連携した、コンタクトセンター特化LLMの開発・実装です。
アルティウスリンクはデジタルBPO事業を手掛けており、ELYZAの技術を生かしてコンタクトセンター向けのLLMを構築。
企業や自治体のお客様対応業務のDXを強力に後押ししていきます。
お客様対応は、生成AIの有力な活用シーンと見られています。
適切な対応を自動で生成できれば、現場の業務効率化に直結するためです。今回の取り組みを手始めに、他の特定業界向けのLLMサービスも順次展開される予定です。
生成AI社会実装の加速に期待
国内トップクラスの生成AI技術とキャリア大手の計算資源・実装力の掛け合わせは注目です。
生成AIの研究開発はもちろん、企業の現場でその力を発揮できる環境を整備することで、生成AIの社会実装が加速されることが期待されています。
グローバルの潮流に惑わされることなく、日本発の競争力ある生成AI技術を育む。
こうした動きを通じて、AIが社会課題を解決し、生産性向上に寄与していくことを願っています。
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